共感力を活かす依頼・お願い:相手の状況を理解し協力を得る方法
スムーズな依頼には「相手への共感」が不可欠
仕事を進める上で、他部署や同僚に何かを依頼したり、お願いしたりする場面は頻繁に訪れます。このようなコミュニケーションを円滑に進めることは、業務効率を高め、チーム全体の連携を強化するために非常に重要です。しかし、依頼の仕方を間違えると、相手に不快感を与えたり、協力を得られなかったり、最悪の場合は人間関係にひびが入ることもあります。
なぜ、スムーズな依頼が難しいと感じる方がいるのでしょうか。それは、依頼する側の論理や都合ばかりに焦点が当たり、依頼される側の状況や感情への配慮が不足しがちだからかもしれません。ここで役立つのが「共感力」です。相手の立場や状況を理解しようとする姿勢が、依頼やお願いを成功させる鍵となります。
この記事では、共感力をどのように依頼やお願いの場面で活かすか、具体的なステップと合わせて解説します。
なぜ依頼・お願いに共感力が役立つのか
依頼やお願いの場面で共感力が役立つ理由はいくつかあります。
- 相手の負担を想像できる: 相手が現在どのような業務を抱えているか、依頼する内容が相手にとってどれくらいの負担になるかなどを推測できます。
- 適切なタイミングや方法を選べる: 相手の状況を考慮することで、「今話しかけて大丈夫か」「メールと口頭どちらが良いか」といった、より効果的なアプローチを選べます。
- 相手の感情に配慮できる: 依頼内容に対する相手の懸念や抵抗感を推し量り、安心感を与える言葉を選ぶことができます。
- 一方的な関係を防ぐ: 自分の都合だけでなく、相手にもメリットがあるかを考えたり、感謝の気持ちを伝えたりすることで、ギブアンドテイクの関係性を築きやすくなります。
共感力を用いることで、依頼は単なる「タスクの割り振り」ではなく、相手への敬意や配慮を含んだコミュニケーションへと昇華されます。これにより、相手は「協力したい」という気持ちになりやすくなります。
共感力を活かして依頼・お願いする実践ステップ
共感力を意識して依頼やお願いをするための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:依頼する前に相手の状況を想像・把握する
依頼したいと思ったときにすぐ声をかけるのではなく、一度立ち止まって相手の状況を観察し、想像してみましょう。
- 相手は今、忙しそうに見えるか(集中しているか、会議中かなど)。
- 依頼する内容が、相手の専門分野や普段の業務内容と合っているか。
- 過去に同じような依頼をしたことはあるか、その時の相手の反応はどうだったか。
- 今日の相手の様子はどうか(疲れているか、機嫌は良さそうかなど)。
もし可能であれば、「今、少しお時間大丈夫ですか」「〇〇さん、△△の件でご相談したいことがあるのですが、いつ頃お手すきになりますか」など、相手の状況を確認するクッション言葉を入れるのも良い方法です。
ステップ2:相手の状況への理解を示す言葉を添える
依頼の本題に入る前に、ステップ1で把握・想像した相手の状況に対する理解や配慮を示す言葉を加えましょう。これは、相手への共感を示す重要なジェスチャーです。
- 「お忙しいところ申し訳ありません。」
- 「急なご連絡となり恐縮です。」
- 「〇〇の作業中かと思いますが、少しだけお時間をいただけますか。」
- 「この件、もしかしたら〇〇さんにとっては慣れない作業かもしれませんので、お手間を取らせてしまうかもしれませんが…。」
こうした一言があるだけで、相手は「自分の状況を分かってくれている」と感じ、話を聞く姿勢が生まれやすくなります。
ステップ3:依頼内容を明確かつ簡潔に伝える
共感的な姿勢を示した後は、依頼内容そのものを分かりやすく伝えましょう。
- 依頼の目的: なぜその依頼をするのか、背景や目的を共有します。相手は依頼の重要性や自分の協力がどう役立つのかを理解できます。
- 具体的な内容: 何を、いつまでに、どのような形でお願いしたいのかを明確に伝えます。曖昧な表現は避けましょう。
- 期待する成果: 依頼によって何を得たいのか、相手がイメージしやすいように伝えます。
回りくどい表現や曖昧な指示は、相手を混乱させたり、意図と異なる結果を招いたりする原因になります。簡潔かつ具体的に伝える努力が必要です。
ステップ4:相手の協力に対する感謝を伝える
依頼を引き受けてもらえた場合はもちろん、検討してもらえるだけでも、感謝の気持ちをしっかりと伝えましょう。
- 「ありがとうございます。大変助かります。」
- 「ご検討いただけるとのこと、感謝いたします。」
- 「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。」
感謝の気持ちは、相手が「協力して良かった」と感じることに繋がり、今後の関係性にも良い影響を与えます。
ステップ5:断られた場合の共感的な対応
依頼が難しかったり、断られたりすることもあります。その際も共感的な姿勢を忘れないことが大切です。
- 「承知いたしました。やはり今は難しかったですよね。」
- 「状況、理解できます。無理を言ってしまいすみませんでした。」
- 「もし可能であれば、〇〇さん以外に頼める方をご存知ないでしょうか」など、代替案を相談する(ただし、相手の負担にならない範囲で)。
断られたからといって不機嫌になったり、相手を責めたりせず、相手の「できない」状況に共感を示すことで、信頼関係を維持できます。そして、次に依頼する際に協力を得やすくなる可能性が高まります。
まとめ:共感力を味方につけて、より良い協力を得る
依頼やお願いの場面で共感力を意識することは、単に頼みごとをスムーズに進めるだけでなく、相手との信頼関係を築き、職場の人間関係を円滑にする上で非常に効果的です。
相手の状況を想像し、理解を示し、分かりやすく伝え、そして感謝する。これらのステップを実践することで、あなたの依頼はより建設的で協力的なものへと変化していくでしょう。
共感力は一朝一夕に身につくものではありませんが、日々のコミュニケーションの中で意識的に使っていくことで、必ず磨かれていきます。まずは身近な依頼の場面から、この記事でご紹介したステップを試してみてはいかがでしょうか。