共感を言葉で伝えるための具体的な3ステップ
はじめに
共感力は、相手の感情や考えを理解しようとする心の働きです。しかし、ただ心の中で理解しているだけでは、相手にそれが伝わらないことがあります。共感した内容を言葉にして相手に伝えることは、より良い人間関係を築き、コミュニケーションの質を高める上で非常に重要です。
特に職場においては、チームメンバーや上司、顧客との間で誤解なく円滑にやり取りを進めるために、共感を適切に表現するスキルが求められます。ここでは、共感を言葉で相手に伝えるための具体的な3つのステップをご紹介します。
なぜ共感を言葉で伝えることが重要なのか
共感を心の中で感じているだけでは、相手は自分の気持ちや状況が理解されているかを知ることができません。言葉にして伝えることで、以下のようなメリットが生まれます。
- 相手の安心感: 「この人は私の話をちゃんと聞いて、理解しようとしてくれている」という安心感が生まれ、信頼関係の構築につながります。
- 誤解の防止: 自分の理解が正しいかどうかを相手に確認する機会となり、意図の食い違いや誤解を防ぐことができます。
- 対話の促進: 共感を伝えることで、相手は安心してさらに自分の考えや感情を話せるようになり、対話が深まります。
共感を伝えることは、単に相手に同調することではなく、「私はあなたの話に耳を傾け、あなたの内側で起きていることを理解しようと努めています」という敬意と関心を示す行為です。
共感を言葉で伝えるための具体的な3ステップ
共感を言葉で伝えるプロセスは、以下の3つのステップに分解して考えることができます。
ステップ1:相手の言葉や状況を「受け止めた」ことを示す
まずは、相手の話をしっかりと聞いていること、そしてその言葉や状況をあなたが「受け止めている」ことを非言語的、あるいは短い言葉で示します。これは、相手に「自分の声が届いている」と感じてもらうための最初のステップです。
- 実践例:
- 適切なタイミングでの相づち(「はい」「ええ」「なるほど」など)
- 真剣な表情やアイコンタクト
- 相手の言葉の一部を繰り返す「おうむ返し」(例:「つまり、〇〇ということですね」)
- 簡潔な確認の言葉(例:「今のお話は△△についてですね」)
このステップは、傾聴の基本でもあります。相手が話しやすい雰囲気を作り、あなたが開かれた姿勢でいることを示します。
ステップ2:相手の感情や意図を「理解しようとしている」ことを言葉にする
次に、相手の言葉の背景にある感情や、伝えようとしている核となる意図について、あなたがどのように理解したかを言葉にして伝えます。これは、あなたの解釈を提示し、それが正しいかどうかの確認を促すステップです。推測を含みますが、「私の理解はこうですが、合っていますか?」というニュアンスで伝えます。
- 実践例:
- 感情に焦点を当てる(例:「それは、〇〇と感じていらっしゃるのですね」「大変な思いをされたのですね」)
- 意図や状況に焦点を当てる(例:「つまり、あなたは△△を求めているのですね」「その状況は□□が難しかった、ということでしょうか」)
- 問いかけの形にする(例:「〜について、少し不安を感じている、という理解でよろしいでしょうか」「〇〇のような状況に、少し戸惑っているのですね?」)
このステップでは、「私はあなたの内面に目を向け、理解しようと努力しています」という姿勢を示すことが重要です。感情の言葉は、相手の使った言葉を借りるか、一般的な感情を表す言葉(嬉しい、悲しい、困る、不安、大変、など)を使います。
ステップ3:自分の共感や理解を「明確に伝える」
最後のステップでは、ステップ2で確認した(あるいは確認しようとしている)理解に基づき、あなたがどのように感じ、何を理解したのかをより明確に言葉で伝えます。これは、単なるおうむ返しや推測ではなく、「私はあなたの立場や感情に寄り添って考えています」というメッセージを伝える段階です。
- 実践例:
- 「〜というお話を聞いて、それは〇〇だったでしょうね、と感じました。」
- 「あなたの置かれている△△という状況は、□□のように大変だと理解しました。」
- 「もし私がその状況だったら、きっと◎◎のように感じたと思います。」(これは相手の感情を決めつけるのではなく、自分の経験を通して理解を示唆する表現です)
- 「あなたがその件で感じている▲▲という気持ち、よく分かります。」
このステップでは、「分かります」「理解できます」「お察しします」といった共感を示す言葉を効果的に使います。ただし、これらの言葉を使う際は、前のステップで相手の状況や感情について具体的な理解を示していることが重要です。単に「分かります」と言うだけでは、相手に響かない場合があります。
実践上のポイント
- 同意とは違う: 共感は相手の感情や立場を理解しようとすることであり、その意見や行動に同意することとは異なります。同意できない場合でも、共感を示すことは可能です。
- 一方的にならない: 共感を伝えることは、相手の言葉を引き出すための手段でもあります。自分の解釈を一方的に押し付けるのではなく、相手の反応を見ながら進めることが大切です。
- 自然な言葉で: 形式的なフレーズを覚えるだけでなく、自分の言葉で自然に表現することを心がけましょう。練習を重ねることで、スムーズにできるようになります。
まとめ
共感を言葉で伝えることは、相手との心の繋がりを深め、信頼関係を築くための重要なスキルです。今回ご紹介した「受け止める」「理解しようとする」「明確に伝える」という3つのステップを意識することで、あなたのコミュニケーションはより相手に響くものとなるでしょう。
日々の会話の中で、これらのステップを少しずつ試してみてください。最初はぎこちなくても、意識的に実践を続けることで、必ず共感を言葉で伝える力が向上していくはずです。